2022年 5月 ~ 6月
第四期 「レーザー微細加工のための基礎講座」シリーズ
(Apr. 26, 2022)
レーザーの特性として,単色性や収束性などが挙げられます。多くの波長の光線の寄せ集めではなく,遠くまで拡がることなく伝播する光は,扱いやすく,“素性の良い” ものであるように思われます。
レーザー加工では多くの場合レンズで作った集光スポットを用います。レンズが収差のない理想的なものであったとして,良好な集光スポットは,ビームが球面波や平面波の場合に得られます。球面波も平面波もビームの伝播軸を対称軸として,諸特性が回転対称に分布しています。最も一般的な球面レンズの機能も回転対称ですから,球面波や平面波と球面レンズは大変に相性が良いと云えます。レーザービームは “素性の良い” ものであって,他のビームに比してずば抜けて良い集光スポットが得られるように思えます。ところが実際は,加工用レーザーのビームの諸特性の回転対称性は然程良くありません。これを理解できていないと,「高価な集光レンズを購入したのに,加工痕はイビツで均質性が出ない,…」 と頭を抱えることになります。レーザーは理想の光であり,収差のない質の良い集光スポットが作れると云う幻想を捨てて下さい。少なくとも加工用レーザーの “素性” は良くありません。実際の加工用のビームがどのようなものであるかを理解しておくことは,微細加工で生じる問題の多くで,原因究明,対策立案に極めて有効です。
ここで示したのは,ほんの一例です。他にも多くの実際上のknowledgeがあります。問題解決のための特効薬的な情報を求めても,なかなか得られないことを既に経験されているでしょう。原因は複合的であり,実際上のknowledgeを多く持っていて,はじめて有効な策を立てることができます。
“急がば回れ” です。先ず,第0回の「レーザー微細加工の概要」でこの分野にどのような課題があり,そのアプローチとして何が有効であるかを知ることをお勧めします。その上で各回の各論を聴講されるのが有効です。
(Apr. 19, 2022)
収差とは,レンズを介して物体の像を結ばせる際の,物体と像の相似関係からのズレです。ザイデルの五収差が有名で,球面レンズの中央部だけを用いるようにすれば影響を低減できます(近軸光線)。レーザーは単色ですから,色収差は現れません。また,ビームはレンズに比べて十分細く,注意深く球面レンズの中央を通るようにアライメントされます。従って,ザイデルの五収差の影響は強く現れない筈です。(F-θレンズを備えたガルバノスキャナを用いる場合は,歪曲収差が現れます。)
ところが実際は,多かれ少なかれ殆どのレーザー光源で非点収差は現れています。レーザー微細加工は,ビームの集光スポットが理想的な点状であることを前提としています。非点収差が強く現れている集光スポットでは,高い加工品質を望めません。
何故球面レンズの中央だけを使っても非点収差が現れるのかを第1回「光学の基礎」で,この影響を低減するにはどのようなレーザー光源を選択すべきかを第4回「仕様書・出荷検査書」で解説します。これが原因でお困りの方には,直ぐに効く良薬となるでしょう。そうでなくても,滋養強壮として基礎体力が高まり,仕事の水準が目に見えて向上してきます。
(Apr. 12, 2022)
第四期(第0回~第8回)で用いる資料を,全面改訂しました。弊社webサイトでご覧頂けます。
資料の一部はweb上では非公開です。分野でコンセンサスが得られていない内容であり,講座を聴講されずに資料内容を自己解釈されると,不都合が生じる恐れがあります。一方で,レーザー微細加工で直面している現状の課題・問題を検討する上で出てきた解釈ですので,皆様の抱える課題・問題についても新しい見方や考え方を得るためのお役に立てるように思います。
Web上で非公開の内容も,資料の始めの目次でタイトルをご確認頂けます。お困りの事柄の参考になるか,ご興味のある事柄が含まれているか,一度目をお通しください。
(Apr. 5, 2022)
「面倒な基礎をすっ飛ばして,仕事に直ぐに役に立つことを知りたい」と思われる方は,先ず次をお読みください。
『光学は長い歴史を持つ学問で,対象は多岐にわたっています。所望の機能の光学系を構築するには「幾何光学」が役に立ちます。既に光学系が構築された加工機を導入する場合であっても,日々の光路のメンテナンス・維持の作業が必要です。より良い加工を目指すのであれば,「幾何光学」は身に付けておきたいところです。所望の三次元形状を得るには,加工特性の偏光依存に基づく理解が必要です。また,加工に用いるガウシアンビームの集光特性の理解が前提になります。これらは「波動光学」で説明されます。』
先の文章が意味する内容がほぼ分かる方は,「光学の基礎」を飛ばしてその先の回にお進みください。チンプンカンプンで何を云っているのか分からない方は,急がば回れ,第1回「光学の基礎」を受講下さい。即効性はありませんが,その後の理解のレベルが変わってきます。長い目で見た時,きっと役に立ったと思えるでしょう。
第四期・第0回「レーザー微細加工の概要」,ウェビナー(Teams)
2022年 5月 20日 (金曜),13:30~16:30
第四期・第1回「光学の基礎」,ウェビナー(Teams)
2022年 6月 10日 (金曜),13:30~16:30
費用: ¥11,000 (受講料¥10,000 + 消費税¥1,000) /人・回
お申し込みなどに関しては,弊社homepage「お申し込みなどについて」をご覧ください。
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